研究課題
近年、日本において不適応感やコミュニケーションの欠如、不全が問題とされてきている。たとえばひきこもりや対人不安、自己中心的な個人主義、周囲の人の気持ちを察することや理解すること能力の乏しさから引き起こされる様々な個人的・社会的な問題が、学校や家庭、職場など、様々なところで顕現化している。このような「こころの不適応」については、個別事例的アプローチから検討されてきたことが多かったものの、文化や社会の視点からの検討は数少ない。また、そのような不適応状態改善のための基礎研究や、包括的取り組みもほとんど見られない。そこで本研究では(1)社会・文化的基盤により構築されるこころの適応・不適応を捉えるため、青年期の対人関係・自己に対する認知と感情、また、様々な価値観がどのように心理的な適応感をもたらしているかについての基礎研究(国際共同研究を含む)を行う。(2)さらにこのような基礎的・実証的研究と併せ、対人コミュニケーションの中での認知・感情の役割を解明することにより、社会・文化的適応のあり方を検討し、心の健康と文化的適応に関連する諸分野への貢献を目指す。平成20年度においては、(1)自己・周囲の他者の明示的・潜在的価値観の測定、および(2)対人場面における自己や他者の認知・感情の理解について、青年期及び成人を対象として調査を行った。その結果として、適応感の低い人たちは自己についての評価が低く、周囲からの「サポート」認知も低いことが明らかになった。この結果を受けて平成21年度は、対人関係の中にある「サポート」など、精神的、道具的資源をどのように活用することが適応感と結びついているのかを詳細に検討することとする。
すべて 2009 2008
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (2件) 図書 (1件)
Emotion
Personality and Social Psychology Bulletin 34
ページ: 741-754
心理学研究 79
ページ: 250-256