本研究は、一般の人々がく「素朴なスピリチュアリティ的信念」の存在について、科学的な検討を行い、その適応的な機能を検証するとともに、社会心理学と人文諸科学との学際的研究の端緒を提供しようとするものである。初年次となる今年度は、研究実施計画に基づき、スピリチュアリティに関連する書籍を多数収集し、内容の分析・分類作業を行った。特に重点をおいたのは、人々の素朴な直感や信念を強く反映していると思われる、一般人向けの書物である。作業は現在も進行中であるが、出現頻度の高い内容として、次のような概念が浮かびあがってきている。(1)肉体を超越する魂(スピリット)の存在 : 「物質的な肉体をはなれて存在しうる、非物質的な魂が存在する」、(2)魂の永続性 : 「魂は死後も存続する力をもつ」、(3)因果応報(善因善果・悪因悪果)の原理 : 「自分の行った行為は最終的に、自分にはね返ってくる。良い行いには良い結果が、悪い行いには悪い結果がもたらされる」、(4)心象の現実化・祈りの力 : 「心で念じる強い思いは、それに叶う現実を作り出す(引き寄せる)力がある」、(5)他力による守護 : 「人には、それぞれ守護霊がついており、災難から守り、良い方向に導く働きをしている」、(6)輪廻 : 「人の魂は、この世界で生まれ変わりと死をくり返す存在である」、(7)運命・天命・宿縁 : 「人には、この世で果たすよう運命づけられた役割や、定められた人との出会いがある」このように、スピリチュアリティ的信念の概念が明確化されると同時に、豊富な資料から、それぞれについて、多様な表現や具体的な実例が多数収集された。これらの成果により、尺度作成のための基本的な条件が整備されたと言える。
|