研究概要 |
本研究の目的は、アタッチメント理論や成人アタッチメント研究の知見に基づき、現在社会問題となっているニートの対人的問題と仕事への意識・態度との関連を実証的に検討し、その特異的な心理的特徴を明らかにすることである。最終的には、脱ニート・ニート本人、ニートと接点のある人、統制群(大学生)に対して調査を行う。そこで本年度は、準備段階として、以下の4つを行った。1、ニートについての資料収集およびアタッチメントと仕事との関連についての資料収集を行い、レヴューを開始した。2、脱ニート・ニート本人だけでなく、ニートと接点のある人(つまり、ニートから見ると他者にあたる人)に対してもニートのアタッチメント特徴を尋ねる予定であるため、成人アタッチメントスタイル尺度における自己評定と他者評定の一致度について検討を行った。大学生・専門学校の一年生120名(同性ペア60組)を対象に、質問紙調査を実施し、解析・考察を行った。その結果、成人アタッチメントスタイルにおける2次元については自己評定と他者評定との間に有意な関連性が得られたが、成人アタッチメントスタイルにおけるタイプの一致度は、2分類(安定型・不安定型)では53.7%,4分類では38.0%に止まった。3、ニートの対人的問題を明らかにするために、本研究ではアタッチメント関係の機能およびアタッチメント対象の同定についての測度であるWHOTO尺度を用いる。そこで、様々なバージョンのWHOTO尺度についてレヴューを行い、先程の120名に対して、WHOTO-R尺度の予備調査を実施した。4、臨床心理学者や成人アタッチメント研究者と議論を交わしながら、脱ニート・ニート本人に対して行う質問紙調査および面接調査の内容を決定した。そして、脱ニート者1名に対して予備調査を行った。この1名については、今後も、縦断的に追跡調査を行う予定である。
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