本研究の目的は、アタッチメント理論に基づき、ニート状態の若者における対人的問題と仕事への意識・態度との関連を実証的に検討し、その特異的な心理的特徴を明らかにすることであった。最終年度である平成22年度は、前年度に引き続き、ニート状態の男性3名に対して本調査を実施した。また、今までの研究成果を日本心理学会第74回大会、九州心理学会第71回大会で発表した。また、平成20年度に調査を実施し投稿していた愛着スタイル尺度の自己評定と他者評定の一致度に関する研究は、本年度、パーソナリティ研究に掲載された。以下では、九州心理学会第71回大会で報告した内容を中心に概要を報告する。ひきこもり経験のあるニート男性6名を対象に、「これから先にやってみたいことや頑張ってみたいこと、仕事や職場を選ぶ上で大切にしていること、就職活動中・ひきこもり時・進学時に感じた不安およびその時の他者への相談状況」などについて、個別面接を行い、その内容を明らかにした。その結果、ひきこもり者の語りの内容は、大学生のそれと大きな違いがないことが示唆された。つまり、何か異常があるからひきこもるのではなく、普通の人が普通にひきこもっていることに、この問題の難しさがあるのかもしれない。 また、平成21年度実績報告書でも述べたが、社会とのつながりが増える場面では、家族内のアタッチメント関係というよりは、家族外のアタッチメント関係の有無が重要であることも示唆された。友達は作ってあげられるものではなく、自分で作るものであるという点にも、もしかしたら、この問題の難しさが潜んでいるのかもしれない。
|