IT社会の中で、手順説明に対する需要は大きい。本研究の目的は、手順マニュアルの理解において、どのような図をどのように提示すれば理解への動機づけが高まるのかを同定し、その認知プロセスを動機づけの期待理論の観点から明らかにすることである。(課題A)動機づけを高める図の作成・提示方法、(課題B)分かることへの期待と動機づけの関係を明らかにすることの2点を課題として研究を実施している。本年度前半は、研究代表者の機関移動のため、研究の実施環境を整えた。また、必要な実験機材を導入した。本年度後半は、具体的に研究を実施した。本年度は特に、課題A : 動機づけを高める図の作成・提示方法について検討を行った。マニュアルには、タイトル、図、説明文がある。また、図は写真や挿絵に、さらにそれらのカラーについての属性がある。本研究は、島田・北島(2008)が提案した、マニュアルの動機づけを評価する実験手続きを用いて、これらの属性が動機づけに与える影響を検討した。その結果、以下の結論が得られた。(a)写真や挿絵は動機づけに与える影響が大きい。(b)それらのカラー化は、モノクロに比較して動機づけの効果がある。ただし、写真や挿絵の存在に比較すれば、その効果は小さい。(c)タイトルは動機づけの効果があるが、写真や挿絵に比較して小さい。(d)これらの効果は、主観的分かりやすさを介した認知的な効果プロセスと、それ以外の感性的な効果プロセスの両方が寄与している。ただし、タイトルについては、認知的な効果プロセスの効果が大きい。
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