研究課題
本研究では、災害発生から5年以上が経過した中・長期的な時間的側面をふまえて、子どもの心身の変化や教師のストレス、さらに学校体制の変化について明らかにするために、中越地震の被災地にある小中学校に勤務する教師を対象としたアンケート調査および面接調査を行った。その結果、子どもの心身の変化は、<人間関係を回避する行動><無気力・うつ><攻撃的な行動><身体症状>であった。中学生で有意だった項目は、思春期特有の問題と切り離して地震の影響であるかどうかを判別することが非常に難しいものであった。そして、かつ周囲の大人が注意をしていないとわかりにくい静かな反応でもあった。一方、小学校では、退行や不安などが多くみられていた。教師が指導にとまどった変化は、<攻撃的な行動>であり、スクールカウンセラーなどの支援が必要な点であることが明らかとなった。また、教師の不安障害・うつ病のリスクを調べたところ、自宅の被害が大きかった教師のK10得点が有意に高いことがわかった。このことから、被災した教師は自分自身の傷つきに対しては十分な支援を受けられぬまま、子どもへの支援にあたっている現状が明らかとなった。さらに、養護教諭、同僚やスクールカウンセラーなど周囲に助言や援助を求めた経験のある教師が半数程度にとどまり、中学校教師が有意に低いことがわかった。支援を求めた対象としては、小学校と中学校共に、養護教諭が最も高く、医療機関が最も低いことがわかった。今後、災害後のこころケアでは子どもたちだけでなく、教師へのサポートもケアの中に明確に位置づけられる必要がある。また、被災体験が大きかった教師は、子どもや保護者への関わりに教師の被災体験による違いが出てくると考えていたことが明らかになった。本研究の成果は、日本トラウマティックストレス学会、日本教育心理学会、および日本学校心理学会にて報告した(する)予定である。
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Bulletin of the Faculty of Education, Shizuoka University. Liberal arts and social sciences series 60
ページ: 17-28