研究概要 |
地域の育児支援の枠組みで実施できる自閉症スペクトラム障害が疑われる子どもと親への早期介入プログラムの開発を行った。本研究は,知多市子育て支援センターと連携して実施し,育児支援の位置づけの中で可能な支援モデルの構築をおこなった。2歳台の子どもと親を対象とした教室プログラムの効果を検討した結果,(1)母親の抑うつをBDIで検討した結果、2クール参加後では参加前後で有意差が認められなかったもののBDIの平均得点は低下し,重症度の人数の割合は,0。01%水準で有意に低下していた。育児ストレス(PSI)では,全ての下位尺度得点で,参加後群の育児ストレスの方が低く,"子どもの機嫌の悪さ"(p<.001,t値6.10),"親としての有能さ"(p<.001,t値3.90)の尺度得点が有意に低下していた。また総得点でも,""親の側面"(p<-001,t値3.41),PSI総点(p<.001,値4.98)で教室参加群の方が育児ストレスが低下していた。新版K式発達検査における検討では,認知-適応(t(51)=4.75,P<.001),言語-社会領域t(51)=4.80,P<.001)で,定型発達児よりも低い発達検査結果を示し,人の表情を区別することや,図形の概念の理解が苦手であることが示唆された。教室参加後は,全領域(t(30)=2.45,P(.05)と言語社会領域(t(30)=2.89,P<.01)の発達指数が上昇していた。母親自身に子どもの状況と自分の関わりを振りかえってもらう生活・かかわりチェック表の検討では,2クールの継続的な参加を通して子どもが集団生活で必要とされる行動やスキルを獲得できていること,また,母親も,子どもに対する具体的なかかわり方を身につけることが確認された。教室終了後、97%の子どもたちが保育園・幼稚園に就園となり、就園後の状況をSDQ(Strengths and Difficultles Questionaire)で検討した結果、年少では41%,年中では59%が,支援のニードが低かった.各領域別の検討では,「行為」「多動」「仲間関係」領域では,年少・年中ともに半数以上がNeed群に属していたが,「情緒」に関してはNeed群は3割程度であった。地域の育児支援の枠組みでおこなう教室のプログラムは,ニーズのある親子に支援の場を提供し,また効果が認められることが実証された。
|