まず、昨年度データ収集した小中学生622名および本年度収集した追加の大学生データの分析を行い、(1)彼らの年代でも「ふつう」について自分はあまり望ましいとは思わないが世間では望ましいと思われているという乖離が認められるのかどうかを検討すると同時に、(2)彼らが「ふつう」だとみなす基準を明らかにするために、彼らのふつうの子・ふつうではない子のイメージ(自由記述)を検討した。その結果、(1)本研究においては乖離はほとんど見られないこと、質問の仕方の問題の可能性が高いこと、(2)性格や対人行動を持ってふつうかふつうではないかの判断を行う人が多く、能力や外見は挙げられることはあったが多くはないことが分かった。また細かく見ると年齢や性別による差も見られた。さらに、(3)「ふつう」の望ましさについて選択式データで小学生から大学生までを比べると、小学校高学年・中学生は大学生に比べ、「ふつう」をより望ましくとらえるという年代差があることが示された。 また、「ふつう」「ふつうではない」人物の印象が、制御焦点(動機づけの方向)によってどのように異なるかを、大学生約80名対象の質問紙実験にて検討した。具体的には、まず自分の理想(促進焦点)または義務(回避焦点)を書かせた後、予備調査において「ふつう」と評価された人物と「ふつうではない」と評価された人物について読ませ、全体的な印象や対人魅力・クラスメイトからの評価の推測を測定した。その結果、「ふつう」の人を、自分はあまり望ましいとは思わないがクラスメイトたちは望ましいと思われていると考える傾向が再び見られたが、実験操作の影響は認められなかった。 既に学会発表済みの予備調査の結果を英語論文にまとめ、投稿中である。
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