日本人が伝統的に重んじてきたと思われる価値「ふつう」について、世間の価値観として認識され続けているために行動に影響するが、実は誰ももう「ふつうさ」にあまり価値をおいていないという形で存在しているのではないかと考えた。本研究では、まず、この現象をシナリオ法を用いた大学生対象の調査で確認した。また、集団圧力の影響を受けやすいといわれている小中学生も、彼らの年代でも上述の乖離が認められる否か、および、「ふつう」を望ましくとらえる程度に関する発達的変化を探るため、小学校高学年・中学生・大学生対象にシンプルな質問を用いた調査を行った。その結果、シナリオ法を用いた場合は乖離が見られるが、質問文で尋ねる場合は乖離が消失していた。これに加え、小学校高学年・中学生は大学生に比べ、「ふつう」をより望ましくとらえるという年代差があることが示された。 さらに、何をもって人を「ふつう」「ふつうではない」と判断しているのか調べるために、中学生・大学生対象に、自由記述式の調査を行った。その結果、性格やその表れと考えられる行動パターンをもってふつうかふつうではないかの判断を行う者が多く、能力や外見は挙げられることはあったが多くはないことがわかった。
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