研究概要 |
本究の目的は,「注視・傾聴」行動を中心とした児童の積極的授業参加行動の様相をより具体的に明らかにし,児童を授業に積極的に参加させるための介入プログラムを提案することであった。22年度の研究実施計画は以下の2つであった。(1)児童の「注視・傾聴」行動を中心とした積極的授業参加行動を促進する介入プログラムの検討,(2)児童の積極的授業参加行動を促進する要因・阻害する要因の検討。(1)に関して,昨年度の研究で観察記録を取った公立小学校4年生の1学級のデータについて,「注視・傾聴」行動の多い児童と少ない児童を抽出し,主に国語の時間における行動を分析した。その結果,「注視・傾聴」行動の多少にかかわらず,共通して見られる行動傾向がある一方で,「注視・傾聴」行動の多い児童に特徴的な行動と「注視・傾聴」行動の少ない児童に多く見られる行動があることが示された。また,計画(2)に関しては,昨年度行った積極的授業参加行動と達成目標・コンピテンスとの関連についてさらに詳細に検討を行い,学年が上がるにつれて積極的授業参加行動が低下する現象についての考察を行った。さらに,授業内容の理解や学業達成と積極的授業参加行動の関連について検討するため,公立小学校5,6年生を対象とした調査を実施した。同時に,担任教師に調査の対象とした授業について,一部の対象クラスについては,授業場面の観察記録を取ると共に,授業内容の中で特に児童に理解してほしいと考えることについて尋ね,児童の調査結果との対応を調べた。その結果,「注視・傾聴」行動の多い児童は,授業の内容について記述を求めた際,より多い文字数で表せることが示唆された。一方,学業達成として取り上げた課題との関連については,積極的授業参加行動の中で「注視・傾聴」行動との関連は得られなかったが,「準備・宿題」行動とは関連があることが示された。今後,さらに分析を進める予定である。
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