盲導犬育成ボランティアのひとつに候補子犬を1年間家庭で育成するパピーウォカー(PW)がある。このPWの家族を対象に、盲導犬候補子犬の育成と1年後の別れの経験が、家族関係や子どもの発達に及ぼについて明らかにすることを目的として研究を行っている。具体的な調査方法としては、10組の小学生の子どもがいるPWの家族を対象とし、縦断的に3時点、計30回の面接調査を実施している。対象家族構成員は、父母と子であり、家族全員に面接を行う。3時点とは、パピーを家庭内で飼育している時、パピーが盲導犬訓練センターに入所する前、パピーが盲導犬訓練センターに入所した後に各家庭に訪問して行っている。 現時点では、1回目の調査が終了し引き続き調査を行っている。面接調査の内容は、パピーへの愛着や関わり、家族への影響について調査を行っている。分析方法は、面接調査の逐語記録を量的、質的な側面から心理学的に分析を行う。主な分析の視点としては、盲導犬候補子犬の育成経験が、家族構成員や家族関係に与える心理学的影響、盲導犬候補子犬の喪失の経験家族構成員や家族関係に与える心理学的影響、PWのボランティア経験による家族関係の心理学的な力動的変化や発達である。 第1回目の面接調査から、家族とパピーは親密な関係を結んでいたことが分かった。また、PWの経験は家族の結束を強め、子どもの感の発達に与していたことが示唆された。このことから、盲導犬育成という事業は視覚障害者のための事業であるばかりではなく、PWという経験がもたらす家族への心理的な影響という視点でも有意義であることが示唆された。子どもの発達には、様々な多様な経験が必要であるが、核家族化が進み人と人との交流が減少した現在において、PWのように愛着と喪失の経験が子ども達や家族にとって重要であると考えられた。今後は、2、3回目の縦断調査を通して変化を検討していく。
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