盲導犬育成ボランティアであるパピーウォカー(PW)の家族を対象に、盲導犬候補子犬(パピー)の育成と別れの経験が、家族関係や子どもの発達に及ぼす影響について明らかにすることを目的として研究を行った。10組の小学生の子どもがいるPW家族を対象とし、縦断的に3時点の面接調査を実施した。カテゴリ分析を行った結果、パピーへの愛着に関わるカテゴリでは、「快適なかかわり」、「家族をつなぐ役割」、「ストレス軽減」、「社会をつなぐ役割」、「健康促進」、「社会貢献」が認められた。また、子どもへの影響に関わるカテゴリでは、「成長」、「緩衝する役割」、「情操教育」、「世話」、「社会貢献への意識」が認められた。 この結果から、PW経験は、家族の凝集性を高め、家族の緩衝剤となり、ストレス軽減に役立っていたことが分かった。また、ボランティアであるので、社会貢献に参与することで喜びや満足感を得ていることが分かった。子どもにとっては、責任感や共感性の発達に関与していたと考えられた。一方、質的に分析した結果、パピーが家にきた当初は、世話やしつけをめぐって家族が混乱するが、パピーへの愛着を基盤として、話し合いや取り組みを通して、徐々に家族で解決していくと考えられた。また、パピーとの別れという喪失を受け入れることに役立っていたのは、家族の支え合いや、盲導犬使用者の視覚障がい者の話を聞く機会、パピーが訓練施設に元気に入所する様子を見ることであった。 以上から、パピーに愛着を抱き、愛着対象を喪失するという一連のプロセスから、PW経験によって家族が発達していくことが示唆された。いいかえれば、PW経験は、家族が向き合い、相談し、協力して取り組む楽しい経験であり、家族がより凝集し、愛着対象を喪失する経験を乗り越え発達していく機会となることが明らかにされた。
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