教育課程に基づいた学習の実現状況を把握する大規模なテストによる調査が、学習指導要領の移行措置の年度に実施される場合、移行措置の影響を受ける項目の難しさは、個々の調査項目に履修の有無以外の諸要因も調査対象学級の間で異なりうることが考えられる。そこで、各項目に対する各学級の履修の有無によって当該項目の困難度に関する母数が異なりうることを表し、さらに、それだけでは説明されない当該項目の困難度に関する母数についての学級レベルでの散らばりを仮定したマルチレベルの項目反応モデルを用いて、データを分析した。この結果、学級の特性値が同じだとしても、当該の項目を履修している学級よりも履修していない学級の方がそれを解くのが難しいこと、および、これだけでは説明されない各項目の学級間の差異を考慮した方がよい可能性が示唆された。 他に、小学校で外国語活動が必修化される前に実施された英語のデータを分析した。その際には、各学校での英語活動の取組に違いがあることを踏まえて、項目困難度に関する母数について学校レベルでの散らばりを仮定した項目反応モデルを当てはめた。また、各学校の年間授業時数をダミー変数化して予測変数としてモデルに組み込んだ。その結果、多くの項目において困難度に関する母数について学校レベルでの散らばりを仮定したマルチレベルの項目反応モデルが相対的にデータとの当てはまりがよかった。年間授業時数との関連については、年間30~35単位時間を本研究での参照カテゴリとしたが、それよりも少ない時数の学校のモデルで表された学校レベルでの特性値の母数の事後分布について95%信用区間で負であった。一方で、参照カテゴリよりも多い時数の学校では、モデルで表された学校レベルでの特性値の母数の事後分布の平均は正であったものの、95%信用区間は0を含んでいた。
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