研究概要 |
本研究の目的は, 1) 抑うつにおける自伝的記憶の機能の特徴を明らかにすること, 2) 抑うつにおける自伝的記憶の機能間の関係を捉えること, 3) 抑うつの持続及び回復にどのように機能が作用するのかを明らかにすること, の3点であり, 今年度は1点目について以下の3つの研究を行った。 1. 抑うつにおける自伝的記憶の方向づけ機能に関する研究 先に実施していた調査のデータについて, 今年度より詳細に分析を加え, 国際心理学会において発表と資料収集を行った。方向づけ機能の中でも, 心のよりどころとなっていると想定される「アンカー」の働きに抑うつが影響を及ぼしており, 抑うつ状態においてはその機能が低下していることが示唆された。 2. 抑うつにおける自伝的記憶の自己機能に関する研究 「昔の自分」と「今の自分」の相違に焦点を当て, 質問紙調査を実施した。結果, 抑うつが高いと現在の自分が好ましくなく, 最近の自分を「昔の自分」として遠ざける傾向があることが見出された。本研究の結果については平成21年の日本心理学会第73回大会で報告する。 3. 抑うつにおける自伝的記憶の社会的機能に関する研究 どういったエピソードの記憶を他者と共有したいか, もしくはどういった記憶は共有するのに抵抗があるか, それらは抑うつの高低でどのように違いがみられるかを明らかにするために, 質問紙調査を実施した。現在分析を進めているところであり, 結果については平成21年の第63回東北心理学会で報告する。 なお, 目的2), 3)については, 平成21年度から開始する面接調査による縦断的研究によって検討する予定である。
|