研究概要 |
【目的】本研究の目的は, 加齢に伴う心身機能の低下や特定疾患の罹患などのため日常生活を自身の力でのみ維持することが困難となった高齢者における適応的な依存のあり方を検討することである。本年度は, 要介護(または支援)認定を受けた高齢者のホーム・ヘルパーへの依存構造を検討することを目的として面接調査を実施した。【方法】調査対象は, ヘルパーを利用して在宅で介護を受けており, 担当ケア・マネージャーがヘルパー利用に順応していると思われる高齢者のうち, 面接調査への協力を了承した10名(66〜90歳)(要支援1〜2または要介護1〜3)であった。対象者に対して半構造化面接を実施した後, 逐語録を作成し, 分析を行った。面接所要時間は概ね60〜90分であった。分析方法は修正版グランデッド・セオリー・アプローチ(M-GTA : 木下,2003)を用いた。【結果・考察】高齢者のヘルパーへの依存には主体的能動的な依存と, ヘルパーからの提案による受動的選択的な依存の2種類が見出され, 能動的な依存の不足部分に対して受動的選択的依存が補足的に機能していると考えられた。さらに, ヘルパー制度による制限や家族の介護への関与など複数の要因が高齢者の依存を規定しており, それらのうち依存行動に対して抑制的な影響を与える要因は, 「できるところは自分でやる」といった自立的行動の促進につながることが見出された。また, 高齢者がヘルパーへの依存やヘルパーとの関係性をより機能的なものとするために, 自身の希望をはっきりと主張したり, ヘルパーが援助しやすいようにあらかじめ準備をしたり, ヘルパーの提供する援助を受け入れるといった工夫をしていることが見出された。さらに, 高齢者は, これまでの経験からヘルパーを利用する際の態度についての信念を形成しており, それに基づいて自身の依存行動を調整していることが見出された。
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