研究概要 |
本研究の目的は,加齢に伴う心身機能の低下や特定疾患の罹患などのため,日常生活を自身の力でのみ維持することが困難となった高齢者における適応的な依存のあり方を検討することである。本年度は,昨年度実施した面接調査の結果を学会で発表し(日本健康心理学会第22回大会),論文としてまとめて投稿した。さらに,昨年度の面接調査で得られた知見をもとに在宅要介護高齢者のヘルパーへの依存と自立を測定する尺度およびヘルパーを利用する際の高齢者の行っている工夫を測定する尺度を作成し,その規定因としてのヘルパーの介護態度との関連を検討するために質問紙調査を実施した。対象者は在宅でヘルパーを利用している高齢者129名であった。分析の結果,高齢者への言葉遣いや配慮,秘密の保持などの基本的な態度がより出来ているヘルパー,高齢者の要望やニーズに沿い,柔軟で臨機応変な対応ができるヘルパーを利用している高齢者は,必要な時には主体的に依存することができる「能動的依存」,ヘルパーからの適切な援助提供があり,必要な時にそれに依存することができる「受動的依存」のどちらも高く,自身の意向をはっきりと言葉で意思表示する傾向が高かった。逆に,基本的な態度ができていないヘルパーを利用している高齢者は,「能動的依存」,「受動的依存」どちらも低く,自身の意向を言い出しにくく,妥協したり,ヘルパーに気を使う傾向が高かった。高齢者の自立的行動については,ヘルパーの介護態度と関連が見られなかった。以上より,高齢者が必要な時にヘルパーに依存することができるためには,ヘルパーの高齢者への配慮といった基本的な態度や高齢者の意向をくみ取り柔軟に対応する姿勢が必要であると考えられた。
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