研究概要 |
本研究の目的は,加齢に伴う心身機能の低下や特定疾患の罹患などのため,日常生活を自身の力のみでは維持することが困難となった高齢者における適応的な依存のあり方を検討することである。本年度は、昨年度に実施した質問紙調査の結果を2つの学会において発表し、それらをまとめて本学紀要に投稿した。さらに、ヘルパーへの依存と自立を規定する高齢者側の要因として対人関係に関する特性の検討、および依存の程度による介護全体への満足感やヘルパーとの関係性に対する満足感における違いを検討するために、新たに質問紙調査を行った。その結果、人に対して心を閉ざす傾向にあったり、傷つきを恐れて人前で自分の意見をいうことを避けようとする傾向の高い人は能動的依存を行いにくく、また人の世話をすることを楽しいと感じたり、相手のよい所も悪い所もありのままに受け入れられる傾向の高い人は能動的依存を行いやすいことが明らかとなったが、自立については違いが見られなかった。また、統計的には有意傾向であるため更なる検討を要するが、ヘルパーに対してより積極的に依存行動を表出している人は介護全体に対する満足感が高い傾向にあり、ヘルパーとの関係性にもより満足感を感じやすい傾向がみられた。さらに、よりヘルパーから必要十分な援助の提案がなされていると感じている人は、介護全体に対する満足感およびヘルパーとの関係性に対する満足感をより高く感じていた。以上より、高齢者の対人関係に関する特性によって依存のしやすさが異なってくること、高齢者がより積極的にヘルパーに依存でき、ヘルパーからも十分な援助提供がなされていると感じることによって高齢者の介護に関する満足感が高まる可能性が明らかとなった。
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