研究概要 |
本研究の目的は,加齢に伴う心身機能の低下や特定疾患の罹患などのため,目常生活を自身の力のみでは維持することが困難となった高齢者における適応的な依存のあり方を検討することである。 本年度は、要介護(または支援)認定を受け、在宅でホーム・ヘルパーを利用している高齢者を対象として、増大する依存への適応過程を検討することを目的とした。どのようにして依存と自立のバランスを取り、増大する他者への依存に対処しているのかを明らかにすることを目的として半構造化面接調査を行った。分析方法は修正版グランデッド・セオリー・アプローチを用いた。その結果、対象者は年を経るにつれく家族・介護専門職への依存〉が増えていく中で、心身の機能レベルに合わせて、一部は他者の援助を借りつつも自身で行うことができる活動は自身で行うという〈部分的自立〉を行っていた。また、デイケアでの仲間やスタッフ、家族等といった<他者とのかかわり>を通して、他者の役に立ったり、他者を喜ばせたりといった<他者のための行動>を行っていた。これによって、自身が一方的に他者に依存する存在ではなく、他者に頼られる、役に立つ存在であるということを実感することができることから、対象者は〈部分的自立〉だけではなく〈他者のための行動〉を行うことでも依存とのバランスを取っていると考えられた。さらに、日常の活動等に「積極的に楽しみを見つける」、自身の「行動への積極的な意味づけ」といった〈積極的な心がけ〉が、〈部分的自立〉を行う動機づけを高めていた。しかし、〈部分的自立〉や〈他者のための行動〉だけでは、依存の増大とのバランスを取ることが難しい場合も多く、依存が増大している自身の状況を割り切って受け入れるという「割り切り的対処」を行っていた。
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