年齢を経るにつれ、加齢に伴う心身機能の低下や特定疾患の罹患等のため、日常生活を自身の力のみで維持することが困難となりやすい。このような高齢者においては、他者に依存することが必要となり、より適応的に他者に依存できることが重要となると考えられる。本研究では、そのような高齢者における適応的な依存の在り方、さらにそれらを規定する要因を明らかにすることが目的である。高齢者といっても、心身機能の状態等によって様々に状況が異なり、依存の在り方も状況によって質的に異なることが考えられる。そこで、まず本研究では、在宅で訪問介護を受けている高齢者を対象とし、介護専門職への依存に焦点を当てることとした。 まず初年度である2008年度は、より適応的な依存の在り方、それを取り巻く規定因等も含めた仮説的なモデルを得ることが目的であった。そのため、在宅でのホーム・ヘルパー(以下、ヘルパー)利用によく適応している高齢者は適応的な依存の在り方を実践していることを前提に、ヘルパー利用に良く適応している高齢者を対象とした面接調査を実施した。 続く2009~2010年度にかけて、主に以下の2つの点について初年度で得られたモデルを数量的研究によって実証することが目的であった。一つは、依存の規定因の検討である。初年度の知見をもとに、依存対象者であるヘルパー側の要因である「ヘルパーの介護態度」および高齢者の対人関係に関する特性について検討した。もう一つは、初年度で見出した高齢者の適応的な依存が、果たして本当に適応的と言えるのかを実証するために、介護にかかわる様々な満足感にどのような違いをもたらすのかを検討することであった。さらに、これらの2 点について質問紙調査によって実証するために、2008年度の面接調査で得られた知見をもとに在宅要介護高齢者のヘルパーへの依存を測定する尺度の作成も行った。
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