研究概要 |
近年の研究から, 統合失調症患者の障害の中核は, 認知機能障害であることが明らかになってきた。統合失調症の認知機能障害は, 社会適応と強く関係しており, 認知機能の改善が社会適応の改善につながるとされている, しかしながら臨床場面では, 1)同レベルの認知機能障害を持っていても, 社会適応が良い患者と社会適応が悪い患者が存在する. 2)同じ治療介入を実施しても、介入後の社会適応が良い患者と悪い患者が存在する. このような個人差が生じる要因については, 未だ良く分かっていない. そこで本研究では, (A)統合失調症患者を対象に, 客観的なアセスメントツールを用いて, 認知機能・社会機能・パーソナリティを評価し, 多変量解析を用いて関連を分析する. 次に, (B)パーソナリティ特性によって, 心理社会的介入の効果が異なることを実証する. 本研究は, 統合失調症患者の就労支援・自立支援を行う際の基礎資料となるだけではなく, 社会適応の心理学的・生物学的研究の基盤となる. また, 本研究を元に, エビデンスに基づいたテーラーメードの支援が可能となる. 本年度では, 研究課題のうち(A)を実施した. 統合失調症患者20名を対象に, 神経心理検査・評価尺度・質問紙を実施し, 認知機能・社会機能・パーソナリティ(気質・性格)を評価した. 調査に際しては, 説明と書面による同意を得た. それぞれの指標間の関連を予備的に検討したところ, 1)認知機能が悪いほど, 社会機能が悪い, 2)認知機能単独よりも, 認知機能と気質・性格を組み合わせたほうが, 社会機能をより強く予測できる, 3)認知機能よりも, 気質・性格のほうが, 社会機能の予測力が強いことが示唆された. この結果は, 第4回日本統合失調症学会において発表した. また, (B)パーソナリティ特性によって, 心理社会的介入の効果が異なることを実証する前段階として, 心理社会的介入に関する雑誌論文2件, 学会発表1件を発表した.
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