研究概要 |
平成20年度は, 1)広く人間のポジティブな側面を伸ばすことに注目したストレスマネジメント教育研修の文献レビュー, 2)ストレッサーの肯定的側面を捉え直すコーピングと理論的に関連を持つと考えられる諸変数との関連の横断的検討を実施した. 1)については, PsycINFO, PsycARTICLES, Pubmed等の英語文献検索エンジン, および, CiNii, 医中誌web, 国立国会図書館データベース等の日本語文献検索エンジンを使用して, 労働者を対象とした研究に限定せずに, 様々な対象者に実施された研究結果を幅広くレビューし, ストレッサーの肯定的側面を捉え直すコーピングと関連を持つ指標を検索した. また, 既存のストレスマネジメント教育研修についてもレビューを行い, 特に人間のポジティブな側面を伸ばすことに注目した内容についてレビューした. 2)については, 1)の検討結果を踏まえて, 人間のポジティブな側面に関連する指標としてポジティブ感情と活気に注目し, 質問紙を構成した. 中国地方のエネルギー関連会社に勤務する労働者97名を対象に, 2週間の間隔を置いて, 2回の質問紙調査を実施した(T1, T2). T1時点における各変数間の相関分析の結果, ストレッサーでは仕事の適性度が高いほど, 心理的ストレス反応では抑うつ感が低く, 活気, ポジティブ感情が高いほど, ソーシャルサポートでは配偶者・家族・友人からのサポートが多いほど, 肯定的再解釈が実行されやすいことが明らかになった. T1時点の仕事の適性度, 抑うつ感, ポジティブ感情, 配偶者・家族・友人からのサポートを説明変数, T2時点の肯定的再解釈を基準変数とする共分散構造分析の結果, ポジティブ感情から肯定的再解釈への有意な正の直接効果のみが認められた. 以上のことから, 肯定的再解釈の実行には, 特にポジティブ感情が促進的な効果を及ぼしている可能性が示唆された.
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