研究概要 |
平成21年度は,ストレッサーの肯定的側面を捉え直すストレスマネジメント教育研修プログラムを試作し,パイロットスタディを実施した.既存のストレスマネジメント教育研修プログラムには,認知の歪みの修正など本研究で取り扱う課題と関連の深い内容を取り上げているものがいくつか認められるため(例えばストレスマネジメント教育実践研究会,2002;島津,2003;坂野,2004),これらを参考にプログラムの案を作成した.同時に前年度の横断調査から得られたデータを解析し,ストレッサーの肯定的側面を捉え直すコーピングと関連を持つ指標としてポジティブ感情を抽出し,それらを効果評価の指標として測定した.労働者を対象に,介入群と統制群を設定したパイロットスタディを実施した.介入群には,試作したストレスマネジメント教育研修プログラムを行い,その後4週間の間隔を空けて両群に質問紙調査を実施した.質問紙への回答については,あらかじめ研究の趣旨や方法などについて十分に説明し,インフォームド・コンセントを受けた上で研究を開始した.本研究に参加することで若干の心理的負担を自覚する場合があると考えられるため,本人から申し出があった場合には健康管理スタッフ等に相談できるルートも確保した.なお,本研究のプロトコルは広島大学大学院教育学研究科倫理審査委員会による審査を受けた.分析の結果,介入群・統制群ともに,ポジティブ感情が向上した。パイロットスタディから得られた結果を踏まえて,最終年度ではストレスマネジメント教育研修プログラムを完成させ,無作為化比較試験の手続きによりその効果を検討する。
|