研究概要 |
本年度においては, 全国35都道府県で開催されたひきこもり親の会において調査を実施し, ひきこもり状態にある人(以下, 本人)とその家族の支援ニーズ, および本人が受療に至るまでの心理的過程について検討を加えた. 支援ニーズにおいては, 平成21年度から全国の都道府県と政令指定都市に新たに設置される「ひきこもり地域支援センター(仮称)」に本人と家族が求める支援について調査を行った. 本人を対象とした調査では, 質問紙調査では92名を対象とした. 本人を対象とした調査から, 本人が同世代と交流ができる場所や心理的支援, そして就労支援を求めていることが示された. また本人の受療促進に関しては, 相談をする事によるメリットが期待されると支援を利用する可能性が高まることが示された. 家族を対象とした調査研究においては, 429家族から得られた回答を解析した. 調査においては, 家族の支援ニーズについて調査が行われた. 調査の結果, 家族は心理専門家によるカウンセリング, 「ひきこもり」についての学習会・講座, 本人が家庭外で活動できるための「居場所」を求めていることが示された. また本人の相談機関の利用やひきこもりの程度は家族機能と関連していることが示された. これらの結果から, 本人と家族は共通して心理的支援を求めていることが示された. 英国では心理的支援の利用を促進するためのImproving Access to Psychological Therapies(IAPT)programmeが実施されており, こうした諸外国の先進事例を取り入れながら, ひきこもり状態への臨床心理的地域援助のあり方について検討を進めていく. また本人の受療促進における家族機能のあり方についても検討を進めていく.
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