研究概要 |
本年度においては,全国28都道府県で開催されたひきこもり親の会において調査を実施し,ひきこもり状態と発達の関連について検討を加えた.また,ひきこもり状態を維持させている家族関係に関する行動論的観点からの検討,さらにひきこもり状態にある人の就職不安に影響を与える要因について検討を加えた. ひきこもり本人を対象とした調査では,質問紙調査では82名を対象とした.本人を対象とした調査から,ひきこもり本人の広汎性発達障害傾向が高い可能性が示された.また,本人は高い就職不安を抱えており,こうした就職不安は就職活動に対する自己効力感の低さや体験の回避が影響を与えていることが示された. 家族を対象とした調査研究においては,332家族から得られた回答を解析に用いた.家族を対象とした調査から,本人同様にひきこもり本人の広汎性発達障害傾向が高いことが示された.また,家族関係を行動論的観点検討した結果,望ましいことを増やすことはできても望ましくない行動を減らすことが困難になっている現状が示された. 調査に加え,ひきこもり本人や家族を対象とした集団認知行動療法を実施し,その効果検証を行った.その結果,家族を対象とした介入においては,家族自身の機能が正常に保たれていることが効果をえるための必要条件である可能性が示された.また,英国にImproving Access to Psychological Therapies(IAPT)programmeの実地調査を踏まえた文献調査を実施した.
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