平成20年度は、(1) 若年層が日常生活で利用している犯罪被害を回避するための方略の程度を計測するための尺度を開発すること、(2) 同尺度と犯罪被害リスク知覚、犯罪不安との関連性についての知見を得ること、(3) 居住形態 (例えば同居か一人暮らしか) などの生活環境的要因が個人の防犯に及ぼす影響についての実証的知見を得ることを目的として研究を行った。 その結果、(1) 若年層は「警戒心」「危険地区回避」「リスク管理」「危険経路回避」「自制」「夜間外出自粛」という六方略による防犯方略を用いており、「危険地区回避」「危険経路回避」「夜間外出自粛」の各方略の程度は男性よりも女性が高いこと、(2) 犯罪不安はある程度男女ともに類似した防犯方略との関連が示されるが、犯罪被害リスクと防犯方略の関連の程度は性別によって異なること、(3) 自宅通学者は一人暮らしを行っている者よりも「夜間外出自粛」方略の程度が高いこと、(4) 居住期間の長い自宅通学者は、居住期間の短い自宅通学者よりも「危険経路回避」と「夜間外出自粛」方略を用いる程度が高いこと、(5) 一人暮らしを行っている学生ではこのような居住期間による差異は示されないことが明らかにされた。 上述した研究成果によって、若年層の防犯方略を多面的に計測する尺度が開発されただけではなく、若年層の防犯方略がリスク、不安、そして居住形態などの多様な要因の影響をうけることを明らかにすることができた。さらに研究成果報告会を実施し、一般市民に同成果を報告した。
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