研究概要 |
平成21年度は,(1)東北地方の四年制大学生と沖縄地方の四年制大学生の犯罪被害リスク認知ならびに防犯方略レベルの比較検討を行うことで.若年層の防犯心理の地域差について実証的知見を得ること(2)若年層における犯罪発生件数の季節的変動の認知,犯罪被害リスクならびに防犯方略レベルの季節的変動を検討することで防犯教育に関する基礎的資料を得ることを目的として研究を行った.その結果,(1)沖縄県大学生のリスク認知は東北地方大学生よりも高かったが,必ずしもそのようなリスク認知が防犯方略レベルに反映されていないこと,(2)居住形態による効果を統制してもこの結果は観察されることが明らかにされた.特に「自己モニタリング」「夜間外出自粛」方略において地域差が示されたことから,若年層の防犯心理にはライフスタイル要因が強く影響する可能性が示唆される.さらに若年層の防犯心理の季節的変動については,男女ともに夏に多くの犯罪が発生していると認知しているものの,犯罪被害リスク認知と防犯方略レベルに明確な季節的変動は観察されなかった.従来の研究(本多・山入端,2008)から本研究から得られた結果を考察すると,若年層は,たとえ夏に治安が悪化すると感じていてもそれを自分自身の犯罪被害とは結びつけにくいため,犯罪発生の季節的変動認知が自己の犯罪被害リスクや防犯方略には反映されにくいことが示唆される.また,本年度は,研究成果の一部が国際学術誌に掲載されただけではなく,防犯教育の効果ならびに防犯方略レベルの個人差に関しても知見を得ることができたため,非常に高い研究成果をあげることができたといえる.
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