研究概要 |
平成22年度は,防犯方略の規定因ならびに既存の防犯教育の効果を検証した。具体的な成果は以下の通りである。 1)人格特性と防犯方略 従来の研究から,人々の防犯の程度には個人差が大きいことが明らかにされている。災害心理学でしばしば取り上げられる人格特性(Locus of Control)に着目して実証的検討を行った結果,同人格特性が防犯の程度に寄与していることが明らかにされた。同研究成果は,日本心理学会第74回大会で発表された。 2)住環境と防犯方略 従来の研究から,住環境要因は防犯方略に影響を及ぼすことが明らかにされている(例えばHonda and Yamanoha, 2010)。単身居住者の住環境(居住階数等)を詳細に検討した結果,単身居住者では居住階数によって防犯方略の程度が異なる可能性が高いことが示唆された。同研究成果は,東北心理学会第64回大会で発表された。 3)防犯ブザー利用による防犯方略レベルへの影響 予備的調査の結果から,防犯グッズ利用者の防犯方略レベルは非利用者よりも高いことが明らかにされている.防犯ブザーを配布し利用してもらうという介入により日常生活における防犯方略レベルに変動を生じさせることは可能か,実験的に検討した結果,防犯ブザー利用による防犯方略への時系列的影響は観察されなかった。 このように,平成22年度は,防犯方略の規定因ならびに既存の防犯方略の効果を検証した結果,防犯心理を規定する人格特性に関する新しい知見を得ることができたという基礎的研究成果だけではなく,住空間と防犯,既存の防犯教育の効果など,応用性が高い研究成果をあげることができた。
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