研究概要 |
ACTと呼ばれるアクセプタンス・コミットメント療法(acceptance and commitment therapy; Hayes et al., 1999)の実践で用いられるエキササイズの効果を実験的に検証した研究の1つに、エキササイズによって獲得される脱文脈の状態を指し示した教示によっても、臨床的な効果が得られうるという報告がある(Keogh et al., 2005)。本年度は、自己教示を用いた場合でもそれが確認されるかについて、前年度に引き続き検討した。具体的にはグループデザインを用いて、アクセプタンスとはどのような状態かを示した自己教示を用いる条件と、不安に対処するための自己教示を用いる条件の2条件を比較した。実験は面接室で行われ、正面に設置されたビデオカメラに向かってスピーチを行うという課題を1日1セッション、計4セッション行った。4セッションのうち、最初の1セッションは介入を行わないベースライン、続く3セッションは自己教示による介入を行った。さらに、実験終了後6ヵ月後に再度ベースラインを測定し、介入の効果の維持について検討した。その結果、アクセプタンスの状態を示した自己教示は、社会不安者を対象とした場合、アクセプタンスおよびコミットメントの増大に有効であり、またその効果も維持されること、また、フォローアップ時には特性的な評価不安に改善が見られていたことから、介入からある程度の時間が経過した後には、アクセプタンスに加えて、特性的な臨床的改善が出現することが示唆された。
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