研究概要 |
平成20年度は, 食行動異常傾向測定尺度(以下 : AEBS)(山蔦, 2007など)について以前からの検討に継続し, その信頼性・妥当性を検討するとともに臨床的有用性を高めるため, cut- off pointを設定した。 また, 身体像不満足感測定尺度(以下 : BIDS)(山蔦・野村, 2006)や自己意識尺度 (菅原, 1984), その他尺度による調査を, 主として女子大学生・女子専門学校生を対象に実施した。 平成20年度までの結果では, AEBSで測定される食物摂取コントロール不能感得点がcut-off point以上である場合, BIDSで測定される全身に関する他者評価不満足感が強いことが示され, AEBSで測定される食物摂取コントロール得点がcut-off poinも以上である場合, BIDSで測定される全身のふくよかさ不満足感が強いことが示された。 食物摂取コントロール不能感は他者評価に対する不満足感と関連することから, 公的自己意識との関連性が推測され, 食物摂取コントロールはより主観的な不満足感と関連することから, 私的自己意識との関連性が推測され, これらの結果は, 自己意識尺度得点を用いた検討結果からも説明された。 以上の結果は, 過度のダイエット行動や摂食障害に類似する不適応的な食行動の発現・維持メカニズムを解明することに寄与し, 調査対象者の特徴から, 特に学校精神保健の場における予防的支援に寄与するものと考えられる。 加えて, 自己意識にかかわる心理教育を実践した結果, 高い公的自己意識の低減効果が認められ, 摂食障害にかかわる心理的メカニズムの臨床的妥当性の確認や具体的予防の実現が期待できる。
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