研究概要 |
平成21年度は,食行動異常および摂食障害の予防にかかわる研究として,(1)大学生・専門学校生,摂食障害臨床群を対象とした調査を行い,食行動異常および摂食障害の発現・維持に関する心理モデルを策定すること,(2)心理モデルの臨床的妥当性を確認することを主な目的として研究を実施した。 (1)では,平成20年度に開発した食行動異常の傾向を測定する尺度(食行動異常傾向測定尺度;Abnormal Eating Behavior Scale)および身体像不満足感測定尺度(山蔦・野村,2006)や自己意識尺度(菅原,1984)を用い,調査を実施した結果,"身体像不満足感の円環性(対人関係場面で身体に関する他者評価に否定的感情を有する場合,自己の象徴的側面(顔のふくよかさや骨格)に対する否定的感情が喚起され,痩せ願望が増幅する)"と"食行動異常の連続性(極端なダイエット行動を持続することで,摂食障害の臨床的特徴に類似する心理・行動的特徴に進展する)"から成る,心理モデルを策定した。 (2)では,上記心理モデルの内,"身体像不満足感の円環性"に関与し得る心理教育(山蔦,2007など)を実施し,身体像不満足感の低減効果について検討することで,心理モデルの臨床的妥当性を確認した。検討の結果,対人関係場面で喚起される,身体に関する他者評価への否定的感情に関与する(ここでは,否定的感情を評価せずにAcceptする)ことで,自己の象徴的側面に対する否定的感情,痩せ願望が低減する短期的効果が認められた。この結果から,(1)で策定した心理モデルの内,"身体像不満足感の円環性"について,その妥当性が確認された。 本研究は,食行動異常や摂食障害にかかわる,新たな心理モデルを提唱し,食行動異常や摂食障害予防・支援の基礎的知見を示したものといえる。
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