本研究では、高不安者の有する注意バイアスを脅威情報に対する促進と固着の2つの成分に分けて捉え、注意バイアスの特徴を明らかにすることを目的としていた。 平成20年度は上記の目的に沿って、注意バイアスの促進成分を測定する課題としてAttentional Blink課題(AB課題)と、注意バイアスの固着成分を測定する課題としてDot Probe課題(DP課題)を様々な不安水準の実験参加者に実施し、それぞれの成分同士の関係および不安水準との関係を相関研究によって検討した。 その結果、注意バイアスの固着成分に比べ、AB課題によって測定される促進成分がより個人の主観的不安と強く関連していることが明らかとなった。また注意バイアスの固着成分は主観的不安と同時的に変化するのではなく、その後の不安の変化を予測する変数である可能性が示唆された。これらの結果から、注意バイアスの両成分は、それぞれ不安の異なる側面と関連しており、ある程度独立して存在する現象であることも明らかとなった。 これまで注意バイアスを2つの成分に分けて検討する研究は行われてこなかったが、今回の結果は実施する課題によって測定される注意バイアスの成分が異なり、またそれらが不安に与える影響も異なっていることを示す初めての成果となった。 H21年度には、実験参加者の状態、特性不安を操作した上で、注意バイアスの両成分を測定し、不安の変化との関連を明らかにする予定である。平成20年度、21年度の結果を総合することで、注意バイアスの両成分の測定によって、より客観的に不安を査定する方法の確立を目指す。
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