研究概要 |
本研究全体の目的は,自らの問題や情動と適切な距離をとるための自己制御の試みとして,気晴らしを接近的に活用するための予防的介入法を開発することであった。方法として,気晴らしの活用に関する質問紙調査等の基礎研究を踏まえて心理教育プログラムを構成し,大学生を対象とした実践研究を行った。 本年度は,前年度に試験的に作成した心理教育プログラムの効果を再検証することを目的とした。心理教育プログラムの効果については,対象者から得られた質問紙調査による量的データと自由記述等による質的データをもとに検討し,内容の改訂及び応用可能性に関する示唆を得ることとした。 まず,本年度前半に,前年度と同様に週1回90分,計4回の心理教育プログラムを実施した。各回では,ネガティブ気分への対処など,気晴らし方略を効果的に活用するために必要な認知行動的な知識や対処スキルを取り上げる講義やグループワークを実施した。教育効果の検討のため,心理教育プログラム実施前後に適応指標を含む質問紙調査を行った結果,気晴らしやストレス対処に関する自己効力感について概ね肯定的な変化が見られた。本研究全体を通して,比較的短期間で実施可能な心理教育プログラムの有効性が示唆された。これまでの成果をもとに内容を洗練させるとともに,より大規模な対象者での実施や実施可能な回数に応じて,介入形態を工夫した心理教育プログラムを考案することが課題である。
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