本研究は、広汎性発達障害(PDD)女児・女子を対象としたグループプログラムを立案し、臨床実践を通した行動分析的検証を行うことが主たる目的である。本年度は21年度に開始したグループを継続したもので、参加者はアスペルガー障害の中学生女子1名と広汎性発達障害の高校生女子1名、計2名であった。また、参加児の母親対象のグループワークも併行して行った。グループには「学びの時間」と「エクササイズ」の時間を設定し、前者ではアスペルガー障害やPDDなど、それぞれの障害や困り感について学び、対処法や工夫の仕方を行動分析的に考える場面とした。それに応じて、セルフマネージメント(自己記録法等)のホームワークを行い、困り感や実際の行動が変容することが結果として得られた。また、感情を理解しコントロールできることを学ぶプログラムを実施した事例では、自他共に良好な行動変容を認めた。参加児の困り感や不適応行動は軽減し、適応的な行動が拡大したことが伺える。個々に抱えている問題や目標は発達段階や生活環境等によって複雑で多岐にわたる。既存のグループプログラムを当てはめるのではなく、個々の状態に即した機能分析に基づくケース・フォーミュレーションが有効であった。これは、支援のための「ストラテジーマップの作成」と「運用」に位置する。一方、女児・女子に限定したグループであること、そしてスタッフも女性のみとし、母親も同席する場面を毎回取り入れたことは、「タクティクス(戦術)」の1つとして機能したと考えられる。参加者は他者の存在を意識し、さまざまな考えや気持ちを知り、スタッフはモデルとして機能した。仲間との出会いや女性スタッフとの活動は、参加者自身の、障害特性を含めた自己理解への促進、そして女性としての知識・スキルを獲得する機会となっていたことが、参加者と保護者の発言・アンケート調査等から伺えた。
|