研究概要 |
20年度は, 抑うつ症状が遷延した治療抵抗性うつ病患者における心理・社会的機能の実態を把握するため, 質問紙調査を実施した. 対象は,抗うつ薬治療を2種類以上少なくとも6週間続けているが十分な改善が認められなかった外来うつ病患者16例(男性4名,女性12名.平均年齢38.3歳, SD=10.4)であった. 質問紙は, 抑うつ症状および心理・社会的機能を評価するため, ベック抑うつ質問紙(BDI), 36-item Short-Form Health Survey(SF-36), Social Adaptation Self-evaluation Scale(SASS), 自動思考尺度(ATQ-R), 非機能的態度尺度(DAS)で構成された. 質問紙調査は12週のインターバルをおいて2回実施し(Time1, Time2), 全2回の調査に参加した13例のデータを解析した. その結果, 抑うつ症状(BDI)については中等度以上の得点を示す者が多く(平均24点), Time1とTime2の得点を比較したところ, 有意な差はみられなかった. 社会的機能(SF-36, SASS)についても同様に12週後の得点に変化はなかった. 一方, 非機能的認知(DAS, ATQ-R)については,Time2の得点はTime1よりも有意に減少していた(いずれもp<0.5). 以上の結果から, 治療抵抗性うつ病患者の抑うつ症状および社会的機能は, 通常の薬物療法を受けていても, 変化に乏しく, 著しい社会的機能障害が継続している可能性が考えられる.
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