場と状況に応じて自らの感情を調整する能力(情動制御)は、幼児期に発達するとされるが、近年の保育園における調査では年長に「キレる」行動をもつ子どもが増加してくることが報告された。これは、自らの否定的感情の調節が困難な子どもたちが、周囲が長ずるに従って、クラスの中で目立つようになっていっているとも考えられる。 上述の仮説を出発点とし、縦断研究を行い、幼児期の否定的感情の発達と日常の行動との関連を捉えることが本研究の目的である。研究の対象の場を「対人場面」とするのは、鹿島(2000)の対人場面の不安感情への対処が非対人場面に比して時間をかけて形成されているという報告による。 研究初年度の平成20年度の研究実施は以下の通りである。年度前半は保育園にて観察を行い、園生活での否定的感情エピソードを収集した。収集されたエピソードと非対人場面を合わせた6場面の図版を作成し、年度後半には予備研究として3〜6歳児に個別言語面接を行い、横断的検討を行っている。 現在3歳児のデータの検討を行った結果、3歳の時点においても否定的感情の認知の仕方によって、回答される対処(情動制御方略)に差が見られることが考えられた。この結果については、日本教育心理学会第51回総会において発表する予定である。現在得られた4歳児・5歳児クラスのデータの検討を行っている。この結果についても平成21年度中に学会発表を行う予定である。 この横断的検討を経て、縦断的検討の準備を現在進行しており、平成21年度に縦断的検討をスタートする予定である。
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