研究概要 |
本研究課題の目的である,睡眠薬の減薬・離脱と集団療法における認知行動療法(Cognitive BehaviorTherapy;以下CBT)の効果を検証するため,本年度は集団療法におけるCBTのプログラムをまとめた上で,その効果に関する検討を,2つの観点から実施した.1つ目に,集団療法におけるCBTによる睡眠薬の減薬・離脱効果を検証した.集団療法におけるCBTを実施した対象のうち,実施前に睡眠薬を服用していた23名を対象とし,実施後の服薬状況を検討したところ,5名(21.7%)は服薬量(頻度)に変化は認められなかったものの,6名(26.1%)は減薬に成功し,12名(52.2%)は睡眠薬の服用中止に至った.これらの結果から,不眠症に対するCBTは個人だけでなく,集団療法においても睡眠薬の減薬・離脱の効果が期待できることが示された.2つ目に,個別のCBTと集団療法におけるCBTの間で治療効果に違いが存在するのかについて検討した.集団療法におけるCBTを実施した42名,および個別のCBTを実施した者のうち,年齢と治療前の不眠重症度を集団療法の対象者とマッチングさせた42名を抽出し,治療効果の比較を行った.その結果,個別のCBTと集団療法におけるCBTの治療効果に有意な差は認められず,集団療法においても個別と同程度の治療効果が見込めることが明らかとなった. 以上の研究,および3年度に渡る研究成果から,本研究課題によって構築された不眠症に対するCBTのプログラムは(1)不眠症に対して有効な働きを持つ,(2)睡眠薬の減薬・離脱の効果が期待できる,(3)(1)-(2)の効果は個別治療だけでなく,集団療法においても同様の効果を見込むことができることが明らかとなった.集団療法は個別治療と比較して,物理的,経済的合理性の高い実施形態であり,本研究課題の意義は大きなものと考えられた.
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