研究概要 |
裁判員は, どのような情報処理の過程を経て, 目撃記憶(目撃証言)の信頼性を評価するのだろうか。前年度までの研究によれば, 目撃記憶の信頼性を推定可能と思われる情報が複数ある場合, 裁判員は個々の情報に対して, 必ずしも個別に情報の重みづけを行っているわけではない。情報の重み付けは, 事案に含まれる他の情報の影響を受けて相互作用的に変化する可能性が示された。本年度は, 次の2つの実験を行い, 上記知見の精緻化を試みた。実験1では, 事件の目撃者が被疑者を犯人であると同定する架空の事例を, 冊子によって参加者に提示した。各事例は, (1) 証人の確信度(高, 低), (2) 凶器注目の有無, (3) 目撃から犯人識別までの遅延(1日, 1週間, 3ヶ月), (4) 被疑者の特性(既知人物, 異人種, 記述なし)の4要因の組み合わせによって構成された。参加者は, 各事例における犯人識別(目撃記憶)の信頼性について, 7件法で評価した。実験2では, 証人の視力が目撃記憶の信頼性評価に及ぼす影響に焦点を当て, 実験1に準じた手続きにより実験を行った。具体的には, (1) 証人の確信度(高, 低), (2) 凶器注目の有無に, (3) 証人の視力(0.33, 2.0, 記述なし), (4) 犯人目撃時の状況(明るい, 暗い) の要因を加えた4要因の組み合わせからなる事例を参加者に提示し, 各事例における犯人識別の信頼性について, 7件法による評価を求めた。実験1, 2とも, 結果については現在分析中である。
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