研究概要 |
我々が体験するイメージは,あらゆる感覚様相の情報とともに感情情報を伴う全体的体験である.しかし,従来のイメージ研究では,感覚情報と感情情報はそれぞれ個別に扱われてきた.本研究では,イメージ体験における両情報を同時に考慮し,感情プライミングパラダイムの手法を用いることでその相互作用に焦点を当てた検討を加えることを目的とした.感情プライミングパラダイムでは,2つの連続する試行を実施し,先行する試行における処理の感情的な側面が後続する試行における処理に影響を与えるか否かを検討する.実験参加者は先行試行において処理した刺激が感情的なものであることた全く気づかずに課題に参加していても前述の影響が見られる.そのため,先行試行での潜在的な感情情報処理が及ぼす影響について明らかにすることができる. 平成21年度ではイメージの感情情報が後続の視覚情報処理に及ぼす影響を明らかにする研究を行うための基礎的検討として,感情プライミングパラダイムでの先行試行において用いる刺激の選定を行った.具体的には,まず,特定の種類の感情を喚起させる場面をイメージし,その際に主観的に感じられる各種の身体感覚の程度について評定することを求めた.これにより,それぞれの感情をもっとも喚起させやすい身体感覚のプロフィールパターンを推定した.その上で,得られたプロフィールパターンが意図した感情の喚起に有効か否かを確認する調査を行った. 以上の検討により,イメージの感情情報が後続の視覚情報処理に及ぼす影響を実験的に検討する際に必要となる基礎データを収集することができた.
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