研究概要 |
本年度は,昨年度,仮説通りの結果が得られなかった実験について,その結果が信頼性のあるものかどうかを検討するため,主に,感情誘導刺激画像の見直しを行った上で,下記のような実験を行った. 実験計画は,感情状態(ネガティブ,ニュートラル)と言語化(あり,なし)の参加者間2要因計画であり,実験材料に,学習・テスト用の顔画像,感情誘導刺激にIAPSから選出した画像,感情評定尺度にAffect Gridを用い,次の通りの手続きにしたがって,実験を行った.まず,感情誘導セッションでは,ネガティブ群の参加者はネガティブ画像10枚とニュートラル画像3枚が,ニュートラル群の参加者はニュートラル画像13枚がランダムに提示され,画像ごとに好ましさを評定する方向づけ課題を行った.なお,画像の提示の前後に,Affect Gridを用いて,感情状態の評定を行った.次に,学習セッションでは,5秒間で顔を記銘し,続いて5分間のフィラー課題を行った.そして,言語化セッションでは,5分間で顔を言語描写し,言語化なし群の参加者はクロスワード課題を行い,最後に,テストセッションとして,多肢強制選択式の再認テストを行った. その結果,感情誘導が行われないニュートラル群では,言語化による妨害効果(=言語陰蔽効果)が示されたが,感情誘導が行われたネガティブ群では,指標(再認率,修正再認得点)によって違いはあるものの,少なくとも,言語化による妨害効果は示されなかった.この結果は,昨年度行われた実験とほぼ同様の傾向であり,結果の一般性が確認されたものと言えるが,理論的説明と完全に合致するものとは言えないため,詳細な再分析をはじめとして,さらなる手続の見直し等が必要であると考えられる.
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