研究概要 |
私たちは, さまざまな対象に興味(interest)を持つ。興味を持つこと/持たせることは, 教育からマーケティング, エンターテイメントに至るまで, さまざまな場面で重視される。しかし, 興味はなぜ生じるのか, 興味を感じている状態とはどのようなものかといった基礎的な理解は十分に進んでいない。本研究では, 興味を感情の一種ととらえ, プローブ刺激法を中心とした心理生理学的な手法を用いてその状態像を解明するとともに, 興味の生起にかかわる認知過程についても実験的に検討することを目的とする。初年度は, 興味を感じているときの生理状態について, 脳波と自律神経系活動の観点から検討した。12名の大学生・大学院生にコンピュータゲーム(テトリス)を行わせた。難易度を3段階に操作し, 参加者の技能レベルと一致した条件と簡単すぎる/難しすぎる条件を5分間ずつ実施した。課題中に, 脳波(自発脳波, 振動プローブ刺激に対する事象関連電位), 皮膚コンダクタンス水準, 心電図(心拍数, 心拍変動)を測定した。その結果, 参加者が楽しく集中できたと回答した条件において, 脳波のシータ帯域パワーが前頭部で増大し, 振動プローブ刺激に対する事象関連電位の振幅低下が認められた。これは内的処理が亢進し, 外界刺激に対する応答性が下がったことを示している。現在は自律神経系活動の分析を続けており, 興味を持って課題に取り組む状態における各指標間の関係について検討中である。
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