研究概要 |
単純接触効果とはある刺激に繰り返し接触していると,当該刺激に対する好意度が上昇する現象である(Zajonc, 1968).一方,潜在学習とは学習意図がなく学習されたことの情報などについて自分から意識的にアクセスすることができないような学習のことを指す(Reber, 1967).これらは様々な実験において検討されているが,単純接触効果と潜在学習の関連性についての検討もいくつか行われている(Gordon & Holyoak, 1983; Tanaka et al., 2004).本研究では,潜在学習における長期的学習スケジュールによる知識形成と,刺激の呈示傾向が,単純接触効果に及ぼす影響について,人工文法学習課題を用いて検討を行った.学習フェーズでは,2週間の期間で,隔週ごとに計3回学習を行った長期学習(20名)と,1回のみの学習を行った短期学習(40名)からなった.長期学習では異なる3つの学習スケジュール(上昇:1-5-9回,同数:5-5-5回,下降:9-5-1回)で文法文字列学習させた.テストフェーズでは,新奇の文法文字列と非文法文字列をランダムに呈示し,その文字列に対して,好意度判断と文法判断,文法判断に対する確信度評定を行わせた.実験の結果,呈示傾向の操作による好意度の変化は見られなかった.また,文字列の文字数によって文法判断評定値が異なっていた.これらのことから,文字列の過度の呈示によって,各呈示傾向貢献における文字列に対する好意度が閾値まで達した(天井効果)可能性があった.また,規則性の判断において,他の文字列と重複しているパターンが,反復呈示により加算的に重み付けられ,接触頻度の高かったパターンとの類似度による判断が行われている可能性があった.
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