研究概要 |
第1実験では,刺激として熱帯魚の絵を用い,刺激典型性(高,中,低)と呈示回数(減少,一定,増加)を設定した。呈示インターバルとして2週間,1週間,5分を設定した。刺激学習後に,参加者には刺激を1枚ずつ呈示し,刺激に対する感性評価と再認判断を求めた。全体的に,事前典型性の高い熱帯魚の評価が高く,典型性の低い熱帯魚の評価が低い傾向にあった。高典型刺激は既知感からくる安心感によって肯定的感性評価が生じた。よって,単純接触効果に概念のプロトタイプ形成の介在が示唆される。呈示回数については,刺激の典型性ごとに異なる振る舞いを見せた。典型性低条件において,刺激と形成されたプロトタイプとの類似性が低いために,呈示回数減少,一定条件における典型性・親近性評定値が低く,肯定的感性に結びつきにくかったといえる。一方で,呈示回数増加条件では,直前の反復接触によるエピソード記憶の形成が刺激への典型性・親近性を上昇させたと考える。低典型刺激はプロトタイプとの類似性が低いにも関わらず典型性が高く評価された点については範例モデルのほうが適合性が高かった。 第2実験では,人工文法学習課題を用い,学習フェーズ内で文字列の呈示回数を操作した。昨年度の実験では呈示回数の操作による好意度への影響はみられなかったが,これは文字列の過度の呈示で文法自体への接触が増加し,天井効果が生じた可能性が考えられた。そこで本年度は,各文字列の呈示回数ではなく,文法自体の出現回数の操作に変更して,短期学習における呈示回数の効果を検討した。その結果,文法との接触回数が増加すると,その文法の文字列は規則性があると判断された。一方,好意度評定では接触回数,文法性の効果は見られなかった。学習された人工文法の構造ではなく,学習フェーズで呈示された文字列との類似性や部分的な共通性の有無によって,規則性確信度評定が行われていたと考えられる。
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