平成20年度は、ストレス負荷からの回復に友人の存在が与える影響に関し、基礎的情報の収集を行うことを目的とした。今回の研究では、ストレス負荷時に、親しい友人がいる場合といない場合で、心身に生じるストレス反応がどのように変化するかを検討したKamarckら(1990)の手続きを参考に実験を行った。 実験参加者は、5分間の安静、5分間の暗算ストレス、5分間の回復を1セットとする実験に、2回参加した。一方は友人なし条件で、他方は友人あり条件であった。友人は、その場にただ存在するだけで、具体的な補助等は行わない、パッシブサポートであった。これらの設定で、サポートが心臓血管反応(反応性および回復過程)に与える影響を調べた。 友人なし条件では、収縮期血圧が最大点で25mmHg程度上昇したが、友人あり条件では、20mmHg程度であった。これらの結果から、親しい他者の存在はストレス負荷時の血圧上昇を緩和し、健康に寄与しうる可能性が示唆されたが、統計的に有意な差はみられなかった。また、このような血管上昇緩和は、主として血管拡張によりもたらされる可能性が示され、これに関しては長野・児玉(2005)の結果と一致すると考えられたが、ばらつきが大きく統計的に有意とはならなかった。これらのサポート効果は、同席する友人との信頼関係や、同席時の友人に対する認知、ストレスに対する認知に依存し、変化する可能性が示された。
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