本年度は、昨年度より開発中の高齢者用複数パターン同時学習実験システムの開発および評価と、これを用いた学習効率の推定方法の検討を行った。用いた学習パターンは2種類で、人工的な3次元形状カテゴリーと、2つの視覚属性に基づくカテゴリー(色と2次元形状)の2通りであった。これらを若齢参加者と高齢参加者(評価のため、少人数)に提示して学習して貰い、その際のパフォーマンスを、幾つかの機械学習エージェントのパフォーマンスとの比較に基づいて、その学習効率を検討した。また、学習支援につながる因子として、学習者の注意に着目し、特に物体ベースの注意が学習効率をどのように変化させるのか、またその影響には年齢による違いが見られるのか、という点について、探索的な実験により検討を行った。具体的には、学習すべきパターンが提示される物体(コンテナ)が同じ場合と違う場合とで、学習成績に違いが見られるかどうかを、コンテナの動きや眼球運動の操作を加えながら、検討を行った。現在のところ、未だ少数のデータではあるが、注意の影響が年齢によって異なる傾向が見られている。コンテナへの注意が高齢者の学習にもたらす正の影響として、学習の際に注目すべき手がかりの切り替わりを、コンテナへの物体依存性注意の切り替わりが支援する可能性に着目しているが、この点については、階層ベイズモデルによる理論的研究と実験データの解析の両面から、現在検討中である。
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