本研究の目的は、わが国の就学前施設における外国籍幼児に対する保育の課題や具体的な保育方法、保育者と外国籍保護者との連携の方法を明らかにすることである。 平成21年度は、保護者参加を重視するヘッド・スタートや保護者との連携について、平成21年1月に参加したカリフォルニア・ヘッド・スタートの研究会と保護者会、平成21年8月に参加したEECERAで得た資料を参考に、弘前大学教育学部紀要第103号に発表した(「ヘッド・スタートにおける保育者と保護者との連携」)。また、平成21年10月にカリフォルニア州の就学前施設で保育者にインタビューし、保護者の積極的な保育参加が、子どもの発達に肯定的に働くことを保育者と保護者がともに認識し、保育者は様々な保護者参加の方法を準備して参加を促すとともに、保育者自身のコミュニケーションスキルの向上を目指していることが明らかとなった。この報告の一部は、日本保育学会会報No.147に「海外リポート」として紹介した(「カリフォルニア州の保育者からのメッセージ」)。 さらに、米国での「文化的に敏感な教育」(culturally responsive pedagogy)と教員養成に着目し、わが国での「文化的に敏感な」保育と保育者養成に示唆を得た。教師は子どもたちが肯定的な文化的アイデンティティを発達させるため、多様な文化や子どもの家族構成に合わせた教材・活動を取り入れて援助し、教師自身が文化の違いを尊重する態度をもって、子どもたちがもたらす文化を、教授・学習過程に取り入れることに熟練していなければならなかった。さらに「文化的に敏感な学習環境」をつくるためには、教師はどの子どもも歓迎され、差異を認められていると感じる安心な環境をつくり、カリキュラム・教授方法を子どもの「関心」や「好む/避ける話題」、「学びやすい方法」といった子どもの特性に合わせなければならなかった。 これらは、日本の保育現場で外国籍幼児を受け入れる際にもあてはまる課題であり、保育方法・環境づくりであった。この成果の一部は、日本保育学会第63回大会(2010年5月22日)において発表予定である(「『文化的に敏感な』保育に関する研究-保育者の役割と環境づくりから-」)。
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