地域・職場のコミュニティをつくる成人の学習を援助する学習支援者の専門性と力量形成に関して次の3つの研究課題について理論的・実践的研究に取り組んだ。 課題(1) 成人学習支援者とは誰か まず、欧米の成人教育研究では成人学習支援者の範囲をどのようにとらえているのか検討したうえで、わが国における成人学習支援者にあたる人びとについて検討した。社会教育・生涯学習に関わる職である社会教育主事(主事補)や生涯学習関連の行政職員、高等教育機関における社会人学生を教える教員、健康に関わる職である看護師、保健師、栄養士といった人々、企業・ビジネスの領域における人材育成・企業内教育担当者など、成人の学習を支援するさまざまな状況における人びとが、成人学習支援者としてとらえることができるということを文献研究によって示した。これにより、これまで実態として成人学習者を支援する実践に取り組みながら成人学習支援者として位置づけられてこなかった人々をとらえなおし、整理する意義がある。 課題(2) 成人学習支援のための専門性とは何か 成人学習支援のための専門性の内実について研究するために、理論研究・事例研究について国内外の文献資料を収集した。また仮説の検証のために地域における学習グループのリーダー、社員教育の研究者、保育者養成学校の教員にインタビューを実施し、共通する専門性を検討した 課題(3) 実践的な力量形成のために何が必要か 成人学習支援者の実践を展開する能力の開発は、支援者自身の実践の省察を中心として取り組まれ、学びあうコミュニティに支えられて展開されていくということについて、D. ショーンのの省察的実践論およびE. ウェンガーの実践コミュニティの概念を検討した。また、成人学習支援者の省察による専門性の形成プロセスを検討するために、1970年代以降展開されてきている長野県松川町の保健師の力量形成の取り組みについて、記録をもとに吟味した。
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