地域・職場のコミュニティをつくる成人の学習を援助する学習支援者の専門性と力量形成に関して次の3つの研究課題について理論的・実践的研究に取り組んだ。 課題(1) 成人学習支援者とは誰か 社会教育を中心に福祉や保育、教師教育など多様な領域において学習支援や人材育成に関わる入びとの実態を探り、領域を横断する「成人学習支援者」という考え方が成り立ちうることを検討した。これまで実態として成人学習者を支援する実践に取り組みながら成人学習支援者として位置づけられてこなかった人々をとらえなおし、整理したところに意義がある。 課題(2) 成人学習支援のための専門性とは何か 理論研究・事例研究について国内外の文献資料を収集し、各領域における学習支援者への聞き取りおよび社会教育分野を中心とした実践研究の検討を行い、成人学習支援のための専門性を検討した。またこれまでほとんど検討が進められてこなかったが、現場では近年大きな課題として直癒している「評価」の視点から検討を進め、何が専門性として評価されるのか、またどうすれば実践を評価しうるのかについて先行研究を整理することで課題をまとめた。 課題(3) 実践的な力量形成のために何が必要か 成人学習支援者の実践的な能力の開発は、支援者自身の実践の省察を中心として取り組まれ展開されていくという省察の考え方に基づき、D.ショーンの省察的実践論について検討した。省察による力量形成が十分に効果を発揮するためには、個人の取り組みだけではなくその学習支援者の属する組織のあり方や力量形成のシステムも問い直し、変容させていく必要があることから、実践コミュニティ(community of practice)の概念に着目し、E.ウェンガーの議論を中心に理論的検討を行った。また、北アメリカにおけるContinuing professional educationと成人教育学との関連を検討した。
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