研究概要 |
前年度,幼稚園の年長児クラスに焦点を当て、活動における相互作用をより丁寧に分析した結果,教師が自由遊びと集団活動をつなぐことで,子どもたちの時間と空間と関係をつなぎ,協同性を育成していることが明らかになった。これを踏まえて今年度はこれらの幼児が小学校でどのように協同性を高めていくのか,フィールドワークにより検討を行った。その結果,第1に,班活動においては,幼稚園の自由遊びと異なり,メンバーを選択できず,内容も考えや製作物の交流やゲームなど決められており一定の制約があった。幼稚園においては自由遊びを集団活動につないでいくのに対して,小学校では一斉での学習活動を構成するものとして班活動が位置づけられていた。しかし子どもの経験としては,幼稚園での自由遊びで少人数でのやりとりをしてきた経験がベースになっており,私的に発話しあうことが学習の展開につながっていた。第2に,一斉授業の場面では,個々の子どもの発話をつなぐという点で,幼稚園と小学校とに共通する構造が見られた。子どもの経験としてもみんなに向けて話すよう指向ざれるという点で共通していたが,小学校では他者の話を聴いて自覚的に自分の学習活動につなぐレベルになっていた。第3に,協同性の発達を支える教師の専門性の向上として,幼稚園教諭と小学校教諭が互いの実践を知ることは幼児期から児童期への子どもの発達やそれに相応しい活動の連続性を意識することにつながっていた。またそれぞれに長期的な実践を記録として書き記して省察することが子どもの育ちや自身のあり方を見直し転換を図るという意味で専門性の向上に結びついていた。
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