地方分権が本格的に進行しているが、その背景には、自治体経営の合理化の問題もある。したがって、昨今の市民の政治システムへの参加が形式的・動員的にならないようにするためには、住民・市民が地域課題、政治課題に対する意識を高めるための学習機会(政治教育・市民教育)の充実が求められる。本研究では、特に学校外(=社会教育)において、いがに政治教育・市民教育が展開され得るかを構想するために、これまでほとんど着目されてこなかった「選挙啓発と社会教育」という視点に着目し、選挙啓発と社会教育が歴史的にどのように結びついてきたのかを施策と実践の両面から総合的に検証する。 平成21年度に行なった研究活動は、主に以下の二点である。第一が、戦前期を対象とした研究である。特に、政府レベル、民間レベルで行われた政治教育事業、政治教育実践に関する資料収集を進め、選拳粛正運動にも関わった田澤義鋪らの思想分析も行った。その成果の一部として、日本社会教育学会第56回研究大会において、「社会教育における公民教育論の検討-田澤義鋪を中心に-」という題目で報告をした。 第二が、戦後を対象とした研究である.選挙管理委員会、明るい選挙推進協会等の選挙啓発組織、社会教育行政(教育委員会)等が連携する形で展開されてきた各地の政治教育実践の歴史と現状について分析すべく、資料収集を進めた。その成果の一部として、「選挙啓発と社会教育-選挙啓発活動の現状に関する調査報告を中心に-」という論文発表を行うとともに、日本社会教育学会第56回研究大会において、「生涯教育政策・コミュニティ政策の展開と社会教育の再編成」という題目で報告をした。
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