地方分権が本格的に進行しているが、その背景には、自治体経営の合理化の問題もある。したがって、昨今の市民の政治システムへの参加が形式的・動員的にならないようにするためには、住民・市民が地域課題、政治課題に対する意識を高めるための学習機会(政治教育・市民教育)の充実が求められる。本研究では、特に学校外(=社会教育)において、いかに政治教育・市民教育が展開され得るかを構想するために、これまでほとんど着目されてこなかった「選挙啓発と社会教育」という視点に着目し、選挙啓発と社会教育が歴史的にどのように結びついてきたのかを施策と実践の両面から総合的に検証する。 平成22年度に行なった研究活動は、主に以下の二点である。第一が、戦前期を対象とした研究である。政府レベルの検証としては、1930年代の選挙粛正に関する政策文書の収集と分析を特に精力的に行い、民間レベルの検証としては、前年度に引き続き、選挙粛正運動にも関わった田澤義鋪の思想分析を進めるとともに、田澤の影響も受けて、学校外の青年教育に携わった下村湖人の思想分析も行った。 第二が、戦後を対象とした研究である。前年度に引き続き、選挙管理委員会、明るい選挙推進協会等の選挙啓発組織、社会教育行政(教育委員会)等が連携する形で展開されてきた各地の政治教育実践の歴史と現状について分析すべく、資料収集を進めた。また、選挙啓発が、戦後、広くコミュニティ振興とも関連しながら展開してきたこともふまえ、1970年代以降に展開してきたコミュニティ政策の分析も行った。
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